雨が降るかもしれないから、ゆっくりしてはいられないのだが、やはり来てしまった。
半世紀ぶりの生家は跡形もなく、どこに家があったのかさえも掴めなかった。
よくひとりで遊んでいた裏の原っぱに向かったのも何かを期待したわけではない。跡形もないことを確かめたかったのかもしれない。原っぱの奥の方に石や土を積み上げて一生懸命作った基地はなかった。一面をホウキグサが紅く染めている。
そうだ。おぼろげな記憶が蘇える。確か誰かが家に持ってきた鉢植えをもらって私が植えたのだ。その種が落ちて芽吹いてまた落ちて、ここまで増えたのか。